英語圏の医学界でも声楽界に於いても、健康のために、そして良い声のために腹式呼吸(abdominal breathingまたはdiaphragmatic breathing)を行うことは重要であるとされている。
ジュリアード音楽院のブラウン教授は、医学と声楽の双方を結びつけた傑出した人物として有名だが、彼もアメリカの学生たちに腹式呼吸による発声の根本的な重要性を強く訴えていた。
日本の武道に於いても、腹式呼吸の重要性については昔から触れられている。
英語はその特性上、腹式呼吸でないと話しにくい。
ただ、認知の問題はいつもの通りで、腹式呼吸ができている人は、その重要性がわかる。できていない人は、浅い呼吸の状態が普通なので、どれほど腹式呼吸が重要なのか?がピンとこない。加えて、最初から健康な腹式呼吸で話している人は、全く意識していないので、呼吸についてよくわからない。
私ショーンは子供のときに親に指導されたおかげで、運良く、健康的な腹式呼吸で育つことができた。20歳ぐらいからは、学術的に腹式呼吸について幾多の研究と検証を行ってきたので、多くの知見に恵まれながら、30年以上指導し続けてこれた。
その中で、熱心な人が多く陥りやすい共通の誤ちというものがあり、今日はそれについて触れる。
「始終腹に力を入れる」というものだ。
これが非常に具合が悪い。
世の中には「常にお腹に力を入れておくことが大切」と指導している教師もたくさんいるようだ。
常にお腹に力を入れておくと、それによって腹筋も鍛えられるということから、理論上は良さそうに見えるかもしれないが、実のところそれは馬鹿げた考え方である。
①まず、腹にばかり始終、ことさら力を入れているというのは不自然極まること。
②1日や2日ならとにかく、年中朝から晩まで、そんなことができるものではない。
③できたところが、窮屈で疲れやすい。声が出せない。
身体は疲労し、脳も疲れる。
変に能動的に力んだ呼吸は、ヒトが本来持っている自然な腹式呼吸ではない。
正しいメカニズムにより、自然に腹が極まる状態が作れているか?が大切なのだ。
ことさら力を入れる必要は全くない。
変に気張った英語は不自然となる。
その英語を聞いている相手の脳も疲れさせる。
気をつけて。
正しき腹式呼吸を覚えよう。自然な腹式呼吸を覚えよう。