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「規律を通して自由は来る」by アリストテレス

「女性が選挙権を得るまでは核兵器は存在しなかった。だから女性に選挙権を付与すべきではない」という、アメリカで有名な例え話がある。

非道い性差別者の話に聞こえるが、これはあくまで科学者のカール・セーガン博士が取り上げたことで全米で有名になった詭弁の例で、根拠の不自然さをわかりやすくモデル化するのが目的のためだけである。セーガン博士は非常に公平で高潔な人物だ。

さて、どんな主張であろうが、主張というものには根拠が必要だ。

根拠があやふやなものであったり、思い込みであったり、辻褄が合わなかったりすると、その主張は間違った根拠から導き出されたアンフェアな主張となる。

もくじ

事実や根拠に基づいて主張することが、話し合いのルール。

事実や根拠に基づく話し合いの大切さは、家族や職場や学校など日常生活の中でも変わらない。

・中学のホームルームで誰かの財布が紛失。証拠もないのに、あなたが犯人だと決めつけられる。理由は「あなたが怪しい」というだけである。あなたの無実の主張は誰にも聞き入れられない。担任の先生もクラスメートも、皆が印象であなたが犯人だと決めつける。

・朝にゴミを出すという昨晩の約束を破ったことで配偶者に責められる。あなたがいくら「昨晩そんな約束はなかった」と主張しても、配偶者は「そんなことより、実際あなたはゴミを出さなかったじゃないか!」と論点をずらし、あなたの言い分を一切聞き入れない。

1番目の例は、クラスの中でまったく事実確認がされていないことが問題だ。魔女裁判のよう。疑われた人はどんな気持ちになるのだろう。魂への暴力行為だ。

2番目の例は、約束があったか?なかったのか?その事実確認が必要。約束を破ったことであなたを罰しているのに、そもそもその約束が無かったのであれば、配偶者があなたを罰する理由が無くなることは自明である。根拠があいまいなことに加えて、配偶者はここで「論点ずらし」という重大なルール違反を犯している。

論点をずらしてあなたを罰し続けるのは、まったくフェアではない。もちろん配偶者には主張があるのだろうが、前提となる根拠が間違っている。

間違った根拠で相手に責められると、当然衝突するし、非常にタチの悪いのは、以下のような論点の多重すり替えだ。

配偶者「あなたは約束を破った」
あなた「私は約束なんて破っていない。そもそも約束なんてなかった!」
配偶者「その反抗的な態度は何だ!」
あなた「なんで事実を確認しないんだ!事実無根だ!」
配偶者「ほら、怒った!怒っているのが約束を破った証拠だ!まともな人が、そんなに怒るはずがない!」

ルールとして、事実や根拠というものは、言い出した方にその立証責任(burden of proof)がある。リチャード・ウェイトリーという19世紀英国の修辞学者が確立した概念である。

ポイント
①事実を大切にすることは、双方にとってフェアな行いであると同時にルールである。
②事実や根拠の立証責任は、言い出した方にある。

いくら英語ができても、この考え方を持っていないと世界では受け入れてもらえない。

アリストテレスは「規律を通して自由は来る」と言った。

今日もフェアで皆が笑顔で暮らせますように!


ショーンツジイ

文化人類学者
英語道場 升砲館 館長


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