SHAWN TSUJII'S

「心の英語」英語で傷ついたあなたへ

こんばんは、ショーンだ。

私は、「善良なフリをして、お節介な過干渉をするのを好むタイプ」の人間が大嫌いだ。もしくは、「あなたのためを思って言っているのだから私は正しい」という考え方の押し付けがましいアドバイスをする人も嫌い。

英語教師で「もっと自信を持って!」「もっと大きい声で!」と静かな生徒の口を無理やり開けさせようとする人も多いが、一見常識的に見えるそれらのアドバイスも私の嫌いなタイプの発言になりうる。

簡単に言えば、彼らの言動は無責任で、ムカつくものが多い。

そこには、彼らも、あなたも気づいていない、恐ろしい構造が潜んでいるのだ。

解説しよう。

まず、以下に3つの例を挙げる。ムカつき指数の低いもの(レベル1)からの順番だ。

ここでは、「あなたと親」という設定だが、それは「あなたと配偶者」や「あなたと上司」という関係でも成立する。

■レベル1(ムカつき指数80)
宿題をやろうと思ってるときに、親があなたに「宿題しろ」と言ってくる。

【解説】今から宿題やるところなのに、これを言われるとあなたは実にムカつくだろう。配偶者に「ゴミ出して」と言われるのも同じパターン。そして、もっとムカつくのが次。

■レベル2(ムカつき指数90)
宿題をやろうと思ってるときに、親が「なんて宿題やらないの!」とあなたを叱責する。

【解説】宿題をやるつもりだったのに、勝手にこっちが「もとから宿題をやらないつもり」だったという設定にしてしまう。ムカつくだろう?ストレスたまるだろう?でも、さらにムカつくのが次のレベル3だ。

■レベル3(ムカつき指数100)
「あなたは私が宿題しなさいって言うまで宿題しない子よ!」と親がガミガミ言ってくる。または、そう親が他人にあなたについて伝える。

【解説】「言うまでやらない」は、ある意味当たり前。こっちが他のことをしている時間や、宿題をやる寸前を狙って「宿題しなさい」って言ってくるんだから。これは勝手にこちらの内面に踏み込み、人格を踏みにじり、内面の聖域まで決めつける人権侵害。こんなの誰かが言っているのを聞くだけでも、私は死ぬほどムカつく。いわゆる「ラベル貼り」ともいう。これは言葉の暴力とも言えるべき野蛮な行いなのだが、「あなたのために言ってるのよ!」などと、言ってる本人もその暴力性に気づいていない場合が多い。

上記の3つの例の奥底に流れているのは、人の心を破壊する「ダブルバインド」だ。ダブルバインドとは文化人類学者ベイトソンが論じた「二重拘束」のことで、簡単に言うと「相手の言うことを聞いても聞かなくても、いずれにせよ罰せられる状況」のことだ。

この例に当てはめて、「宿題をやる/やらない」の選択肢を見ると、どうなるのだろう?

①最初に「宿題をしろ」と言われたときに、宿題をやらない方を選択すると、「どうして宿題やらないの!」とレベル2に進み、あなたはさらに罰せられる。

②反対に「宿題をしろ」と言われて宿題をやると、「あなたは私がやれというまで宿題をやらない子だ」ということで、レベル3まで登り詰める。あなたは自尊心を傷つけられる。

ベイトソンによれば、ヒトはこういう状態になったとき、

やって罰せられるぐらいだったら、やらなくて罰せられる方がまだマシ
という選択をする傾向にあるという。

自分が当事者として関わるとき、ダブルバインドを見抜くのはかなり困難なので、自覚のある人はほとんどいない。

あなたは人生で何度ダブルバインドにはめられてきたことだろうか?

親や配偶者、上司、先生が言うように、あなたは本当に「怠け者」で「自分で何もできない人」「非常識人」なのだろうか?

恐ろしいことに、英語教育業界はダブルバインドで満ち溢れている。

先生「はい、あなたここを読んでください」
あなた「・・・」

これはあくまで一例で、英語・英会話産業はダブルバインドの洪水。

そりゃ読めなくなって当然だ。

がんばって大きな声で読んだら「発音が悪い」とか「張り切りすぎ」と罰せられ、小さな声で読んでも「どうしてもっと大きな声で読まないの!」と罰せられる。

先に述べたように、ヒトは本能的に「やって罰せられるよりも、やらなくて罰せられる」方を選択する。

あなたの声はますます小さくなる。

生気のない声を出すことが、あなたが大切な自尊心を守る最後の砦なのだ。

そこにいるのは、自信なさそうに小さな声でボソボソと英語を読むひとりの英語学習者。

私は断言するが、それはあなた本来の姿ではない。

あなたは自分らしくのびのびと自然体で英語を話すことが可能だ。

ストレスのない、自然な歓びの英語の世界。

うららかな英語の世界。

哀しみを抱えた状態で英語を学んでも、話せるようにはならない。

しかし、「心の英語」という観点から英語を見直すと、今までとは違う世界が開けてくる。

どうか、あなたと私が出会えますように。


ショーンツジイ

文化人類学者
英語道場 升砲館 館長


追伸、教育熱心な親御さんに多いのですが、悪気なく自分の子供にダブルバインドをかけてしまっていることがあります。お子さんと話すとき、知らず知らずのうちにご自身の発言がダブルバインドになっていないか注意なさってください。それがあなたの愛するお子さんの未来を守ってくれます。

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