SHAWN TSUJII'S

バイオリン製作の巨匠、井筒信一氏

一昨日の土曜日のことである。幸運にも私ショーンはバイオリン製作の巨匠、井筒信一氏と直接お話をさせてもらえる機会があった。

89歳というご高齢だが、今も現役でバイオリンの名器を製作されている井筒信一氏。ご子息はアーティストのキャンドルジュン氏である。

井筒信一氏は世界トップクラスのバイオリン製作家として知られているが、現代だけではなくバイオリン製作の歴史を遡っても唯一無二の製作家では!?とも言われるほどの巨匠である。

何世紀にも渡って名演奏家によって弾き込まれたストラディバリウスの孤高の名器は、とてつもなく良い音がすることで知られている。

数年前のテレビ番組で、年代もののストラディバリウスの名器と、完成したての真新しい井筒バイオリンとがブラインドテストで勝負するという特集が放映された。

検証はイタリアで実施され、現地のプロ演奏家の耳でも、両者の音は聴き分けは困難だったという。

この土曜日の井筒先生のお話は深く惹き込まれるもので、こちらの質問にも丁寧にお答えいただき、まさに最高のひとときだった。

そして、ここからは少し文化人類学的な話になるが、私ショーンは巨匠のお話を聞いて雷に打たれたような経験をした。

めまいがしてクラクラした。数十年に渡る私の疑問が解消した。

かつて精神医学の土居健郎先生が、「こだわり」というのも日本人の甘えの現れであると述べていたので、私ショーンもそう理解していた。しかし、この土曜日に井筒信一氏とお話しする中、巨匠がいかに「こだわり」を大切にしているのかを伺い、目から鱗が落ちたのだ。

日本人には西洋人のような宗教心や信仰心、主義が無いことを私ショーンは長年不思議に(残念に)思っていた。

なぜ残念に思っていたのかというと、西洋人から見ると日本人には主義が無さ過ぎるように見えて、日本の本当に良いところが理解されないままコミュニケーションが進んでいくケースを多く見てきたからである。

「こだわりが大切なのだ」

私は張り付くように巨匠の言葉を聞いた。

もちろん、私は今まで人生で何度も日本語で「こだわり」という言葉は聞いているし、それと同じような英語が存在しないことも長年興味深いと感じていたが、これは、生まれて初めて本当の意味での「こだわり」が胸に染み込んできた瞬間だった。

アァ、日本人にとって「こだわり」とは、まさに英語で言うreligious(宗教的な)な性質を帯びた、信念や宗教、主義、信仰のようなものなのだ!

そう私は確信した。というか、確信するよりも先に、心に大きな衝撃があった。

例えば、英語圏では「毎日これをreligiouslyに行いましょう」などの表現は身近なものだ。

宗教アレルギーの強い日本では、上記の文章を見て「え〜!religiouslyに(宗教的に)行う!?そんなの嫌だよ」というような反応を示す人が多い。

しかし、実際はこの場合religiouslyに行うというのは、日本語風に言えば「きっちりと気持ちを込めてやる」というような意味合いだ。

日本人は「信念」や「主義」といった西洋的な抽象概念をあまり好まない傾向がある。だが、「自分のやり方」「譲れない美意識」「手を抜かない細部への執着」は、まさに西洋の信仰心、宗教心そのものなのだ。

「こだわり」とは、「静かなる信仰」なのだ。

井筒信一氏のような職人や芸術家が命をかけて守る「こだわり」というものは、明らかにかつて精神医学者 土居健郎が述べたものとは異質である。

職人や芸術家の「こだわり」というのは技術的精緻さへの信仰であり、美や真理への礼拝にも似た姿勢なのだ。

ヨーロッパ最古の土器よりも、日本で出土した土器の方が5,000年も古い。

織田信長・豊臣秀吉の時代、日本は世界最大の銃保有国だった。

日本は古来モノづくりの地だ。

そして「見えない部分こそ完璧に」と打ち込む、日本の職人の精神。

神風特攻隊員が最後の出撃のために搭乗すると、コックピットの見えないところまでホコリ一つないぐらいまで清掃されていることに気づく。整備兵がいつも以上に心を込めて清掃してくれているのだ。

そういうおごそかな感覚は、西洋の宗教心や信仰心と非常に共通してる。

西洋人にとって宗教を馬鹿にされることは、井筒氏が魂を込めて製作したバイオリンが何も知らないバカに破壊されるようなものだ。

麗澤大学のジェイソン・モーガン准教授はこう述べた。

『どんな国、民族の再生も、その土台に信仰心、魂がなければ始まりません。日本の伝統的な信仰心、神道の精神を蘇らせることなしには、日本国の甦りもないだろうと思います』 (2025)致知出版

私ショーンもそう思う。伝統的な信仰心が大切だ。

宗教アレルギーの人や、親が宗教熱心過ぎて「もうクタクタ」みたいな人もいると思うので、とにかく一人一人が「こだわり」を持つことだ。

日本の「こだわりの心」は西洋の「信仰心」に近い。

教養と信仰を取り戻せ。

世界は、真の日本人の言葉を待っている。


升砲館金剛會 ショーンツジイ

プロイングリッシュスピーカー育成ディレクター



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