闘いの文化人類学・親や上司がいつも正しいわけではない

「日本人はルールを破ったことに対する罪よりも、『自分を怒らせた罪』により相手を罰する」by Professor Tatara

私ショーンは少年時代に文化人類学や民俗学に魅了されて以来、35年以上、ヒトや文化について多岐にわたる研究を行ってきた。オックスフォードブルックス大学院時代は、文化人類学の中でも比較的新しい分野であるコンフリクトレゾリューション(闘争の解決)の研究に情熱を燃やした。

 

闘いの文化人類学。それが私ショーンの生涯のテーマである。

 

第一次世界大戦のときのスローガンThe War that Ends all Wars.ではないが、闘争のメカニズムを知り強くなることが、ひとりひとりの心の平穏を守り、そしてそれが世界の平和に繋がると私は信じているのだ。

 

「闘争」と言うと大袈裟かもしれないが、以下に紹介する口論のような日常的な衝突にその元型がある。

 

例)ある日本の家庭

①母親「さっき、部屋を片付けるって言ってたよね?」
②高校生の娘「ううん、言ってないよ」
③母親「今、そんな話しているんじゃないの!これほど言ってるのに、なんで部屋を片付けないの!」
④高校生の娘「だって、『部屋を片付ける』なんて言ってないもん。いつ私は言ったの?」
⑤母親「いい加減にしなさい!言った言わないなんて、関係ないじゃないの!なんであなたは部屋を片付けないの!」

 

こういうダイアログのパターンは、日本では家庭のみならず、学校や職場でも頻繁に見られるケースである。

 

この会話の前提としてのポイントは、実際、高校生の娘が「部屋を片付ける」と言った事実はなく、その発言は母親が勝手に作り出していた架空のものであることだ。

 

上記のダイアログを順番に見て行こう。

 

①まず、「娘が『部屋を片付ける』と言ったのにまだ片付けていない」というのが怒りの根拠であることが、母親によって示される。

 

②だが、娘はそんな発言をしていない。このケースでは本当に言ってないのだ。

 

③そんな発言が無かったのであるから、母親の怒りの根拠①は消失するはずなのだが、母親は「今はそんな話をしているんじゃない」と論点をずらす。

 

④言った覚えのないことを言ったことにされた娘が、事実の確認を求める。

 

⑤母親は事実の確認を行わず、さらに娘を叱責する。

 

私ショーンは文化人類学者であるので、このようなケースを見かけた場合、本来は母親や娘のどちらにも寄らず、公平かつ客観的に出来事を観察してその構造を論じるのが仕事であるのだが、ひとりの人間として圧倒的にこの娘の味方である。

 

私からすると、この母親のやり方は、娘の心を踏みにじる行為である。

 

文化人類学者タタラ教授が論じるように、日本人はルールを破ったことに対する罪よりも、「自分を怒らせた罪」により相手を罰する傾向が著しく強い。

 

他方、アメリカでは家庭内の話し合いでもルールを守ることが徹底して行われる。論理的思考に従って、事実や根拠に基づいてフェアな議論をするというルールだ。そのルールは日本人には想像もつかないぐらい厳しく遵守されている。憲法のようなものだ。ルールは双方にとって公平であり、ルールを守ることがお互いの権利を守ることになる。大人になるとはそういうことなのだ。

 

キツい言い方になるが、アメリカ的な見方でこのダイアログを見れば、この母親のやったことは

 

①娘の言っていないことをでっち上げ、そのでっち上げを根拠に娘を罰し、
③でっち上げ行為に疑問を持った娘の質問には答えず、
⑤そもそも言ったか言っていないかなどの事実は関係ないと激昂し、さらに娘を罰した。

 

という、薄汚く卑怯な行為にしか見えない。

 

「1+1=3でしょ?だから私は怒っているのよ!え、1+1は3ではない?そんなの関係ないじゃないの!」

↑とにかく、間違った事実を根拠にする議論は、アメリカ人にはこう見える。そのようなあやふやな根拠ではフェアな話し合いにならない。

 

儒教社会の日本では、相手を罰する根拠は「自分を怒らせたこと」であり、事実はどうでもよいことが多い。

 

そのような近代の日本式のやり方は、世界に通用しない。信用されない。

 

ひとつわかってもらいたいのは、私は日本が悪いと言っているのではない。日本にも昔から「是々非々」の思想というものがある。自分の立場に捉われず、良いものは良い、悪いものは悪いという考え方だ。その是々非々の思想はアメリカの伝統的な考え方と同じである。

 

子供を留学にやるのは、子供の将来のために大変良いことだと私は思う。世界の多様性を知り、日本文化を知るきっかけとなる。

 

ただ、問題は、世界の価値観を学んで成長した子供が帰国したとき、親の感覚は以前と同じであることで、そこに家族を悩ます大きなギャップが出てくるケースが多い。

 

あなたの子供は話し合いのルールを世界基準で遵守しようとしているだけ。

 

そういうときに「自分を怒らせた罪」により子供を罰しないで。

 

言いたいこともあるだろうけど、あなたのやり方はあなたの子供の将来に悪影響を与える。先ずは、冷静に事実関係を明らかにして、公平な事実に基づいて話し合ってください。

 

そうすると、娘さんも部屋を片付けるはず。きっと。

 

あなたが中学生や高校生の場合は、こういうことを親に説明できるようにがんばって!生意気と思われて、時間はかかるかもしれないけど。

 

升砲館は文化人類学を非常に大切にしています。いくら英語を覚えても、文化を知らないとコミュニケーションができないからです。

 

ことばと文化に興味のある人は、升砲館に来てください。

 

一緒に稽古しましょう!

 

日本唯一の「強く闘える英会話」を指導する英語道場
升砲館館長 ショーン・ツジイ



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