写真は義息子の小柳デニス貴駿と。横浜のスカーフ親善大使を勤めていた彼が出ていたイベントがあって、その後に撮ったときの写真である。
さて、今日は「マーケティングが英語業界をダメにしている」という問題に触れる。
これはマーケティング大流行の今の時代にこそ言わねばならない事柄だと思うが、ひょっとすれば一種の”タブー”なのかもしれない。
だが私は、断言しても良い。
「顧客の求めに応じること」は本当に正しいのか?
マーケティングの鉄則にこうある。
「顧客が求めているものを売れ」
しかし、顧客が求めているもののレベルが低ければどうなるか?
当然、提供される商品(教材やレッスン)の質も、どんどん下がっていく。
私はこれまでに、人生で3度だけ歌舞伎を観たことがある。
数は少ないが、いずれも圧倒されるような感動体験だった。
しかし、筋金入りの年配の歌舞伎愛好家たちは口を揃えてこう言う。
「最近の歌舞伎はダメだ。観客の見る目が下がったから、役者の演技も甘くなった。昔はちょっとでも芝居が崩れたら、客席から容赦なくヤジが飛んだ」
すなわち、”観る側”のレベルが演者を決めているということ。
下手な芝居に「キャー素敵!」と黄色い声が飛べば、役者は磨かれない。
観客の”甘やかし”が、舞台全体の緊張感を奪う。
同じ構図はテレビにも、出版にも見られる。
2000年前後の吉本新喜劇。
芸人たちが、”アイドル化”し始め、
身体を張る笑いから、口先とキャラだけで場を回すようになった。
あの頃、舞台の空気が軽くなった。
明らかに、エネルギーの密度が落ちていた。
テレビに限らない。
ベストセラーの自己啓発書も同じだ。
タイトルだけが刺激的で、内容は薄い。
なぜか? 読者が「ラクにすぐ変われるもの」を求めているからだ。
英語教育の世界も、まさにその延長線上にある。
「リスニングを鍛えたい?じゃあ、1000時間の音声教材をどうぞ」
「会話ができるようになりたい?では、ネイティブ講師とマンツーマン100回パックをどうぞ」
しかし、よく考えてほしい。
わからない音声を1000時間聞いても、わかるようにはならない。
むしろ、あなたの精神力が先に限界を迎える。持たない。
ネイティブ講師との個人レッスンをいくら受けても、話せるようにはならない。
“レッスンの受け方”だけがうまくなって、英語力そのものは停滞したままだ。
「楽してペラペラ」など、メソッドの効果を喧伝する魅力的な広告のコピーも、全ては顧客の願望をもとに作られたマーケティング戦略だ。
「お客様第一主義」というのだろうか、顧客に迎合しすぎた結果、誰も救われない。
マーケティングの思想は「売るため」には有効かもしれない。
だが、「人を変える」「力を育てる」ためには、まったく不向きだと思う。
業界全体が、「売れるものを作る」ことばかりに集中した結果、
真に価値あるものが、どんどん埋もれていった。
その結果、こうなった。
・成果が出ない教材ばかりが売られ、迷子の学習者が量産された。
・もともと教育に意識の高かった人まで、周囲の”ぬるさ”に引きずられるようになった。
・やる気のある外国人講師も、惰性でレッスンをするようになった。
・品のある英語を話せる日本人が減り、通じさえする英語であれば良いという考えが、習う側にも、教える側にも蔓延するように。
まさに「全体がゆるやかに堕落する構造」が、いまの英語教育業界にはある。
どうすればこの状況を変えられるのか?
英語学習者自身が目覚めることしかないと思う。
外のノウハウではなく、自分の”内なる問い”に立ち返ること。
「本当に自分が求めているものは何なのか?」
「英語が話せるようになりたい」とは、
本当は「伝わる声を持ちたい」「世界とつながる実感がほしい」「自分を越えたい」
そういう深い欲求だったはずだ。
それを、
「楽して伸びたい」
「失敗したくない」
「恥をかきたくない」
「自己修正なんてしたくない」
などの”恐れ”や”欲”に寄生されたとき、マーケティングは見事にそこを突いてくる。
あなたがあなたの内なる気高さを失ったとき、あなたは”本当の望み”を見失ってしまう。
英語とは、技術ではない。
英語とは、在り方そのものである。
あなたがどんな自分でありたいか。
どんな世界とつながりたいか。
どんな声で誰に語りかけたいか。
そこに立ち返らない限り、英語は決してあなたの血肉にはならない。
英語業界は、どこもかしこもマーケティングの大洪水。
習う側も、教える側も、皆が気高さを取り戻せますように。

升砲館金剛會 ショーンツジイ
プロイングリッシュスピーカー育成ディレクター


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